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SIN/PECADO / MOONSPELL
97年発表の3rdアルバム。「PECADO」は「SIN」のポルトガル語。
確かにこれは「ゴシック」の範疇に入るアルバムと言え、当時業界を席巻していたであろう、デジタル・ゴシックの波を被ってはいますが、「君ら結局流行に飲まれてるだけやん」とはとても言えないものです。
ゴシックのムード作り・メロディ感覚やデジタルの無機質さだけでなく、TYPE O NEGATIVEあたりの色気も取り込んだこの、ポルトガル産バンドのアルバムは、神聖に対抗する為の「厳粛さ」と、耽美とは違う「妖艶さ」が合体したような独自のゴシック・ロックで、アンチ・キリスト=粗野で野蛮でブルータルとするバンド群とは別次元の宗教性があります。
楽曲・アレンジメントの幅も多種多様で、屈強でありながら混沌、妖艶と無機質の交歓、歌い易い重苦しさなど、様々な要素を違和感なく料理して仕上げています。寡聞にして言わせて貰えば、このアルバムと同様の世界、そして完成度は、少なくともゴシックの中ではないと思います。
ただ、一体どんなバンドが好きな人に薦めればいいのかよく分からない。
前作におけるゴシック特有の感覚も、次作における攻撃性もなく、変なもの好きに薦めるにしてアヴァンギャルドさがないし・・・う〜ん・・・ボーカルが TYPE O NEGATIVEと同等にディープな声を出すので(OCTOBER LUSTしか知らんが)、女性に薦めればいいのだろうか・・・あんなエロではないから聴いてて恥ずかしくないし。
メタルに限らず、ニューウェイヴ色や各種民族色も取り込んだ、モダン・ゴシック・メタルといった感じ。
一時期の非メタル化したPARADISE LOSTやTIAMATとかが好きな人にはおすすめできます。
歌詞はけっこう繋がりがあるようなので、コンセプト・アルバムでもあるのでしょうか。
宗教的な罪と性の関わりなんかが読み取れるエッチぃ歌詞が、耽美的な音楽や刺激的なアートワークと相俟って、いけない気分を起こさせます。
デジタル色が濃くなってくるのはこの辺からですが、この頃は4thほどではありません。デジタルも取り入れられてるけど、神経症っぽい響きになっている4thに対し、今作はそれがサウンドの艶めかしさを強める方向に作用しているような。
デス声が極力抑えられているのがちょっと残念ですが、この後凄味も深みも大躍進を遂げて復帰したので良しとした方がいいのか……?
ちなみに歌詞ですが、狼やヴァンパイアや烏や月といったゴシック・ロマンスの要素に加え、「官能」という要素が目立ち始めるのもこのあたりからです。