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GENERATOR / ABORYM
2006年作の4th。
Attila脱退、Faust加入というブラックメタルの伝説的メンバーの人事も含んだ編成の変更が
あっただけあって、音楽の中身もかなり変わってますね。まずインダストリアル風味は大幅に
減り、ほんの味付け程度に。代わりにテンポがよく変わる複雑な展開とオーケストラ風の
シンセや時折入るラテン語の荘厳なコーラスなどが前に出た、シンフォニックさが以前よりも
強調されたアルバムになっていると思います。音質もドラムの音がデカく迫力がある上に
音量も丁度良い大きさで、曲もメンバーの写真がまともになったことからも想像される通り、
B級っぽさは全く無く第一級のシンフォ系のバンドと比較しても全く引けを取らないクオリティの高さです。
メジャーなシンフォ系のバンドと比較すると暗黒度は高めなのも嬉しいですね。
機械文明の支配する未来、遂にヨハネの預言が成就し審判の日がきたかのような雰囲気です。
肝心のFaustのドラムですが、確か彼って結構最近まで刑務所にいたんですよね?
明らかにEMPERORの時より凄くなってるんですが…ノルウェーの刑務所はドラムが持ち込めて
練習出来たとしか思えません(笑)。いや、ほんとに電子ドラムぐらいは持ち込めるのでは…。
これだけテンポがころころと変わる作風なのに、まるでドラムという楽器を媒介にして
歌っているような叩き方。正直ドラムだけに集中して聴いていても飽きないくらいです。
かと思えば、「Man Bite God」などでは物凄い重量感のブラストも…いや、ドラムを叩く
楽しさを満喫してますね、Faustさん(笑)。ギターリフも今までより印象に残るメロディが
多く前述の様にキーも前に出てるので、そのアンサンブルを味わう楽しみも増しています。
ヴォーカルはMYSTICUMの人に代わってますが、前作のAttilaのゲロゲロした高音のがなりと
それほど変わる歌い方ではないので、違和感無く曲にあってます。
っていうかドラム、キー、ギター等に比べるとあまり前に出てきませんが…。
メカ度が減ったので、個性という面では減退したかもしれないし、複雑なテンポチェンジは
もしかしたら取っ付き辛いのかもしれません。でもこれだけ高品質ならばこの変化は大歓迎。
ほんとに、これ程凄い作品ならもっと早く買っておけば良かったです。
2ndと3rdは知らないんですけど、インダストリアル要素を楽曲の血液に流し込んで作られた骨格勝負の本格派ブラック・メタル・スタイルとなっています。
CRADLE OF FILTH のようでありDIMMU BORGIRのようでありANOREXIA NERVOSAのようでありEMPERORの1stのようでありLIMBONIC ARTぽさもある、などとオリジナリティーを比較する事に意味はございません。逆に、それだけのバンド名が挙げられたという事自体が、このアルバムの品質の高さを物語っているのでありましょう。
焦点は、ドラマでなくブルータリティでなくスピードでなくシンフォニーでなくメロディでなく、新加入ボーカルPrime Evilの、その名の通りの極悪ブラック・ボーカルを軸にする叙情などない無常(インダストリアル)と畏怖(クラシカル)に満ちたドス黒い終末感で、この圧倒的迫力の背徳感に触れて湧き上がってくる「これを聴き続けてはならない」という危機感を、恍惚にすりかえる喜びこそ、ブラック・メタルの美点ではないでしょうか。
だからといって邪悪さをチープな音質に頼るような真似はしておらず、ドラマティックで複雑な展開あり、緩急の妙によって生み出される暴虐性あり、オペラ風コーラスあり、スラッシュ的ギターソロありで、つまりは感動的な一線級ブラックです。
ま、何より信じがたかった事は、ずっと前にPrime Evilが所属していたMYSTICUMがこのサイトに登録されていた事ですけど・・・。