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FAST DECISION / SINNER
マット・シナー率いるドイツ出身のベテラン・ハード・ロック・バンドが'83年に発表した2ndアルバム。
アルバムといっても、当時の所属レコード会社がバンドに無断で、勝手にデモ音源をリリースしてしまった
というのが真相らしく、マット・シナーはこのアルバムを、SINNERの正式な作品とは認めたくないのだとか。
そんなわけで、90年代半ばにSINNER再評価の機運が高まり、彼らの過去のカタログが一斉に再発された際も
そのリストから外されていた本作は、実際、落書きみたいなジャケット・アートワークは酷いわ、サウンド・プロダクションも
ショボイわで、確かにレーベルのやっつけ仕事感がありありと伝わって来る仕上がりなので、マットの腹立ちも分からなくはない。
ただ、そうしたマイナス面を差し引いて尚、ここに収められた楽曲の数々が放つ強い輝きが弱まる事はない。それこそ、
嘗てBURRN!!の「80年代の隠れた名盤特集」にて、現編集長が本作の名をその筆頭に挙げていたのも納得の完成度の高さだ。
適度なポップさとキャッチーさを兼ね備えたリフ、仄かな哀愁を湛えたマット・シナーのヘタウマVo、
THIN LIZZYとPRAYING MANTISを足して2で割った感じの美しいハーモニー・プレイを聴かせる華麗なるツインG・・・といった、
所謂「SINNER節」は既にこの時点で確立されていて、特に、爽やかな曲調と哀愁を帯びたサビメロの対比が秀逸な①に始まり、
じっくりと聴かせるミッド・テンポの②、序曲的なインスト③を経て、本編のハイライト・チューンにして
SINNER屈指の名曲④、ツインGが泣きまくるバラード⑤へと展開していく、アルバム前半の流れは最高に素晴しい。
事情が事情だけに正規盤の入手は困難ながら(プライベート盤は時々出回っている様子見かける)、
マット・シナー・ファンなら是非とも一度は聴いてみて欲しい逸品。