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VISIONS OF EDEN / VIRGIN STEELE
2006年9月発売の11th。
創世記の時代に神に反逆した女・リリスの悲哀を綴ったコンセプトアルバム。
全11曲で79分の大ボリューム作品で、これまでとの違いは小曲やインストがないこと。長い曲ばかりだ!
だが、これまでの長尺の曲というのは「虹を翔ける覇者」のB面や「天国への階段」的な、
じわりじわりとグルーヴを高めていって、しかし展開は複雑ではない、というものだったり、
あるいはイントロや中間部に凝っているなどの起承転結がカチッと決まったタイプだったりした。
それに対して今回は、1つの曲の中に複数曲分のアイデアが詰まっているものが多く、
テンポチェンジを繰り返したり、骨太リフがぐいぐい曲をリードしたかと思いきやバラード調に転じるなど、極めて複雑、プログレッシブな印象。
そのため、楽曲を正しく賞味するにはじっくりと対峙することが必要だ。
ただ、曲のパーツそれぞれは十分キャッチーだ。
アルバム後半になるとスローな曲が連発されてややダレるが、1曲1曲のクオリティは決して低くはない。
特に歌詞を追いながら聴くと、どれも胸に突き刺さる…。
本作の一番の問題点は、サウンドである。
メインのメロディックなリフをオルガン風の音色のキーボードが担当、
一方ギターは細かいバッキング・リフを刻むが、そのギターの音がかなり小さい。
またドラムもツーバス連打で味気ないうえ、そのドラムの音色も迫力に欠ける。
これはデヴィッドもインタビューで何度か突っ込まれている。
ギターに関しては緻密なフレーズが多かったために爆音には出来なかった、
ドラムに関してはたまたま電子ドラムの音が気に入っていたので、ということだった。
ファンの不満はデヴィッドに届いているので、次作では変わるだろう。
歌に関しては、本作のコンセプトがリリスということで裏声もいつもより多用している感があるが、クオリティは十分だ。
なお、ゲストはなし。デヴィッドの考えでは本作はコンセプト・アルバムであると同時にロック・アルバムでもある、ということだ。
前作の発表が2001年、翌年には企画アルバム2本に初期作の再発、そして2003年後半には実は本作の楽曲のほとんどは完成していた。
というのも、「アトレウス」「マリッジ」を舞台化したドイツの劇団から依頼されて書いたのがこの「リリス・シリーズ」なのである。
デヴィッドは03年には40曲ほどその劇団に送っている。本作も3枚組にしたかったらしいが、これはレーベル側によって却下。
その後デヴィッドは次作について「リリスの続編にするか、別のコンセプトアルバムにするか、ノーコンセプトのアルバムにするかはまだ決めていない」と言っていたが、
本年2009年5月にリリースされるという新作はリリスの続編となることが発表された。