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94年発表のEP、93年のデモに前身バンドMALFEITORの音源を付けた再発盤。07年発売。

ノイジーに歪んだギターノイズとベールのような神秘的なキーボードに包まれた音像、
トレモロリフやベースによって奏でられる寂寥感あるメロディ、ガラガラに潰れた
ヴォーカルの叫びなど、この時点でどこをどう聴いても確立した鬱ブラックをやってます。
今でこそXASTHURやI SHALT BECOMEを始め、STRIBORGやチェコのTRIST、カナダのETHERなど、
このジャンルも優れたバンドが多く現れ、群雄割拠の状態となってますが、この音源はブラック
黎明期のものであるにも関わらず、そのままそれらのバンドと勝負出来るクオリティがあると思う。

それどころか、このバンドは鬱ブラックの元祖でありながら、今の鬱系のバンドが表現する
絶望感や陰鬱感の「先」の情景を提示してるんじゃないかとも思います。
後にベース/ヴォーカルのStrom氏が自殺しているので不謹慎かもしれませんが…このバンドの
曲って、暗いとか絶望よりも「(死ぬことで)これで苦痛から逃れられる…」みたいな、妙な
暖かさがある気がするんですよね…。他の鬱系のバンドと比べるとベースがかなりメロディアスで、
低音域のメロディが強い音像がこの生々しい暖かさを表現しているのかもしれません。

前述の通り複数の音源を集めた作品なんですが、音源を時系列順に聞いていくのも面白いですね。
思いっきりデモ音質で、まだまだ攻撃性も強い(特にヴォーカル)MALFEITORの音源、1曲で
鬱ブラックの大まかな路線を提示したといっても過言ではない93年の音源、キーを入れ疾走も
なくし、ギターの金属的な響きを増した94年の音源…と、作を重ねる毎にバンドのヴィジョンが
固まっていっているのが良く分かって、興味深く楽しめます。

間違いなくBURZUMやFORGOTTEN WOODSと並び、鬱ブラックに影響を与えた存在と言える
バンドだと思います。気分が落ち込んでいる時は聴かない方が良い…と言いたい所ですが、
それを実行に移す寸前レベルの死にたい気分を疑似体験できる作品なので、逆にカタルシスを
得られ、リフレッシュになるかもしれません。…そういえばSTRIBORGって、「風の神」という
意味らしいですが、その名前を採用したのはこのバンドを尊敬してて、最初の4字が同じ単語を
選んだからだったりして…。
Usher-to-the-ETHER 2009年5月2日(土)22時35分

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