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POETRY FOR THE POISONED / KAMELOT
2010年9月発売。
前作から3年もの期間を空け発売された新作。
前作まで、新作発表の度に感じた明確なサウンドの変化が初めて止まった。
進化がないというわけではなく、変化の割合が少なくなった。
The Fourth Legacy、Karma、Epicaと正統派パワーメタルの波に身を投じ、
The Black Haloでよりヘヴィさを求め、
前作Ghost Operaにおいて、ついにKamelotサウンドを完成させた。
その完成度に磨きをかけている。
ほぼ同じ作風なのだが、かといって完全一致かというとそうとも言い切れない。
Karma・Epicaの路線が好きな人からすれば、
それ以降の作風には戸惑いを受けるかもしれないが、
Khan加入作であるSiege Perilousの頃にも既に、
元々ああいう色合いを持っていた。
ただ当時は、煮詰め方が不十分であっただけだ。
前作・今作については「原点回帰」ともいえる。
まぁ、それほどに聴き手を選ぶバンドにまでのし上がったということか。
前作に特に強く感じた、押し引きのアクセントのつけ方。
今回においても非常に良い仕事がなされており、
ストレートでありプログレッシブ、シンプルかつゴージャス、
ミステリアスでドラマティックな、どのバンドにも似合わぬ、
Kamelot印のサウンドが濃縮され収められている。
単なる豪華な彩りはかえって安っぽさが目立つ。
このバンド、そしてプロデュース陣の素晴らしさは、
彼らの曲はよくよく聴いてみれば、
非常にシンプルなメロディにストレートな展開の曲の、
正統派ど真ん中ヘヴィメタルなのだが、
メロディの練り方や展開の起伏のつけ方の工夫、
これに加え、効果的なゲストの配置をし、
似た色合いの濃淡で勝負をするというところに、
全てが詰っている。
演奏陣、ボーカル、ゲスト、全てにおいて、過剰演出がなく、
これ以上でも以下でもダメというレベルの作品だ。
Khanの声質もあってか、Kamelotの楽曲は、
非常に硬質なサウンドなのに印象が柔らかい。
こういうボーカルとサウンドのマッチングからして、
使われる色の種類を削ることは、勇気の要る大胆な勝負だが、
これがよい方向に作用した、と評価したい。
かえってベタベタに多くの色を使いたくなるものだが、
ここに飽きさせない妙があると思う。
あえて言うことがあるとすれば、
このようにコンセプトアルバムでもない割りに、
1枚を通して1曲のようなアルバムを作り続けているが、
ライブでの再現性についてはどうなのだろうか。
ドラマティック路線を突き詰めれば突き詰めるほど、
再現不可能なレベルになっていくのではないか。
それほどにビッグミュージシャンになったということでもあるのだろう。
14曲目、Once Upon A Timeについては、
やはり昔からのKamelotサウンドであるメロディアスパワーメタルの曲なのだが、
いまやこういう曲をあえて収録しなくてもいいような気もするが。
曲自体は相変わらず良い出来だし、濃淡で勝負するパワーメタルということで、
進化も感じるものの、徹頭徹尾聴き手を選ぶのも面白いと思うが。