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THE MARRIAGE OF HEAVEN AND HELL-PART TWO / VIRGIN STEELE
前作から続くコンセプトを締めくくる第二章にして彼らの七枚目の作品。
「〜PART ONE」 とは同時期に制作されておりバンド側は当初二枚組アルバムとして発表するつもりでいたようですがレコード会社の要望で別々にリリースされたそうで、楽曲は当然前作と同一の流れにあり完成度も高いです。
本作では前作からのテーマに加えて 「精神と肉体、天国と地獄の和解」 といったことを表現しているそうです。
ちなみにこの二作品には共通するテーマとなるメロディーが随所に散りばめられていて統一感を上手く演出しています。
前作と本作はそれぞれ単品でも楽しめますが出来れば二枚セットで聴くとより壮大なスケール感を感じることが出来るのでオススメです。
夢想家・I 2004年12月14日(火)1時37分
7thアルバムにして、彼らの最高傑作。入門者は是非このアルバムから聴いてみて欲しい。
スピードチューンあり、大作あり、心癒されるバラードあり、全曲が充実している。
コンセプトアルバムと銘打たれているが、台詞やつなぎのSEなどはなく、普通のアルバムとして聴ける。
またファルセットの多用など、独特のスタイルが時に敬遠されるデヴィッド・ディフェイの歌唱もこの頃は基本的にストレートに歌っており、
上手い歌い手として問題なく楽しめる。メタルが世に生み出した傑作の一つ。
以下、駄文。
初期には荒々しいロック曲とエピカルなメタル曲の両刀を用い、メンバーチェンジ後の3rdでメタル側に大きく舵を切った彼らだが、
4th発表後の長い沈黙の後に再登場した際の5thアルバムでは売れ線狙いになったとも言える音楽性になっていた。
(ただし個人的には5thは全然嫌いじゃないし、再発後に評価を受けることになった4thとの関連性についても考察の必要あり)
その彼らが復活を告げたのが6th「THE MARRIAGE OF HEAVEN AND HELL - Part One」だった。
そしてこれ以降、彼らは欧州シーンにおいて認知度を上げ、バンドの最盛期を迎えるのである。
彼らは自分たちの音楽性を「Barbaric and Romantic(野蛮でロマンティック)」と表現するが、そうした音をアルバム丸全体、フルで味わえるようになるのは6th以降となる。
(ただ7th以降も少しずつニュアンスは違っていくので、このオススメを見て別の作品を買ってもらっても少し困る)
「MARRIAGE〜」のPart Oneと本作Part Twoは2枚組として発表することも計画されたものであり、ベーシック部分でのレコーディングも同じ時期になされている。
そうした点では、彼らのカタログの中では近似したアルバム同士であるとは言える。
ただ微妙な差異はある。
楽曲の雰囲気、色合いとしてはPart Oneの方がロマンティックであり、Part Twoの方はロマンティックというよりはヒロイックなムードがある。
彼らにしか出せないロマンティックな音を味わうならPart Oneでも良いのだが、アルバム全体での充実度から、本作の方を上に置きたい。
数少ない不満としては、サウンドと演奏面を挙げたい。
一つはドラムは迫力不足だ。オリジナル・ドラマーのジョーイは過去作ではもっと活きのいいドラムを叩いていたし、
本作で数曲叩いている新ドラマーのフランクも名手なのだから、予算の問題が考えられる。
低迷直後の作品ゆえ、ということだろうか。同じ問題はギターについても言える。
アルバムは、これ以上ないほど魅惑的なキーボードのイントロに導かれたファストな1.Symphony of Steeleと、
強烈なドラマ性を発散しながらアップテンポで突き進む2.Crown of Gloryによって幕を開ける。アルバム冒頭のインパクトは最高だ。
神秘的な序曲インスト3.From Chaos to Creationに続く4. Twilight of the Godsは雄々しくギャロップし、
5.Rising Unchainedは5分半のサイズの中に完璧な曲展開を封じ込めた名曲であり、雨を歌うバラード6.Transfigurationは聴き手の部屋の中を灰色に変えてしまうだろう。
そして何と言っても7.Prometheus the Fallen Oneと8.Emalaithの大作2連発が本作のハイライトだろう。
俺にとってこの2曲は、「虹を翔ける覇者」のB面2曲と同じくらい重要なものだ。
大作といっても複雑な曲展開をしたり、長いイントロが付いてるわけではない。
「虹〜」の2曲と同じく、構成自体はシンプルであり、それをロングサイズで聴かせられるのは、基本的なリフやメロディの質が飛び抜けているからに他ならない。
2曲で17分40秒の音楽の旅である。
そのクライマックスは秀逸なバラードが引き継ぐ。9.Strawgirlは平和で穏やかで、しかし胸を締めつけられるような切なさもあるスローバラードの名曲。
ここまでが本編とも言える内容で、この先はある種のアンコールだ。
10.Devil/Angelはこれまでの曲調とは異なる、陽気でストレートなメタル。
11.Unholy Waterのムーディな雰囲気は、アルバムの終わりが近づいているのを知らせるかのよう。
12.Victory is Mineもストレートなメタルだが、Unholy〜を通過した後のこの曲には陽気さはなく、アルバムをしめるにふさわしいアグレッションがある。
そしてエピローグとしてのインスト13.The Marriage of Heaven and Hell Revisided。前作のラストのインストの改作版だ。
本作では、ある曲のサビのメロディを他の曲のギターソロに使ったりといった試みがなされている。別の曲の歌詞がそのまま出てきたり・・・。
流用ではなく、それは狙ってやっているものであり、実に効果的な演出になっている。前作の曲のフレーズも登場する。このスタイルは、これ以降の彼らの看板ともなっていく。
そしてそうした演出は、本作がコンセプト・アルバムであるがゆえになされたものだろうが、では歌詞は何を歌っているのか。
実はこれが難しい。
Part Oneでは人種問題、宗教問題、戦争、アーティストと音楽産業の相克などについて歌ったとされる。
Part Twoではそれに加えて精神と肉体、天国と地獄の和解について歌っているという。
つまり、ストーリーアルバムではなく、似たコンセプトを戴いた独立した楽曲の集まりの可能性がある。
しかし一方で、極めてストーリー性の強い歌詞も部分的にはあり、また決まったフレーズやメロディが何度も登場することから、楽曲同士の繋がりも見え隠れする。
そして「エマレイス」の存在だ。前作には登場せず、本作の「Emalaith」と「Victory〜」の2曲のみで出て来る女性。一体彼女は何者なのか?
ヒントは次作「INVICTUS」にある。
「INVICTUS」はタイトルこそ違うが、実際には「MARRIAGE〜」の第3作である。
こちらはストーリーアルバムであり、エンディアモンとエマレイスという男女が、転生をくりかえしながら700年間も神と闘争し、ついには神を滅ぼすという凄まじい話だ。
もしや「MARRIAGE〜」の2作もエンディアモンとエマレイスの話ではないのか?
例えば「鋼鉄のシンフォニー」とは歌詞は戦士を戦場に誘う行進曲のようなものかと思っていたが、神の前に敗死したエンディアモンの魂を
現世(戦場)に呼び出す秘法が「鋼鉄のシンフォニー」の音色であり、歌詞の中に唐突に出て来る「暗黒魔術の精霊よ、俺の名前を覚えていろよ!」というフレーズは、
復活したエンディアモンがそのまま戦場に飛び出ようとし様に、自分を蘇らせた精霊、神と敵対するエンディアモンの味方の(悪の)精霊に対して掛けた言葉ではないのか。
あるいは前作の「The Raven Song」の「黒鴉を解き放て!吾れのもとに飛び来れ!」というサビは、囚われのエマレイスが自身を警護すべき黒騎士の復活を叫んでいるのではないのか?
一度こう考え始めると、「MARRIAGE〜」の2作の曲はエンディアモンとエマレイスの話としか考えられないものばかりだ。
少なくとも、普遍的な人種問題や宗教問題を歌っていると見なせるような安直さがどの歌詞にも欠けている。
しかし、この男女のストーリー、「INVICTUS」の物語というのは「MARRIAGE〜」発表後の96年初頭、デヴィッドが交通事故に遭った時に閃いたものだと言う。
ならば、やはり関係ない話なのか?いや、しかしエマレイスは・・・?
歌詞内容の詳細については、今年「MARRIAGE〜」2作がボーナストラック付きで再発されるそうなので、
ライナーノーツで何かしらのヒントが書かれることを期待したい(以前の3rd/4thの再発では歌詞についても少し触れられていた)。
ただ、歌詞が正確に分からなくとも、断片的なメッセージと楽曲の緊迫感とは符合しているので問題なく楽しめる、というのは付け加えておこう。