CDタイトル↓をクリックするとチェックリストに入ります。
発言者の名前をクリックすると、その人の他のCDレビューが読めます。
(旧形式-更新停止)
Ⅲ / カルメンマキ&OZ
ボクのような後追い世代にとって、このサウンドはとてもピュアな青春時代が思い浮かぶ。
プログレテイストのサウンドで聴ける毒気はむしろ心地良く、自分が10代に感じた夢・希望・若気の悩みのようなモノと、アウトロー的な蔭りが同居していると感じられる。
前作の濃厚な毒々しさを体験して聴くと、何やら「悩みを乗り越えて一歩成長しました」・・のような、達成感・安堵感といったものを感じ、妙に心癒される。
前作の重苦しさから解放されて軽快な仕上がり。
誰もが若い頃に体験しそうな反抗とか甘酸っぱさ、安心感、悩みといった感情が蘇ってくるような過去を懐かしむ心地良さに癒される。
凝った大作主義のデビューアルバムから、さらに深みを増した濃厚な2枚目、そして本作と聴いてゆくと、人の嗜好とか感性の変化ときわめて自然にシンクロしているように感じる。
落ち着いた感じのジャケット・アートワークが、バンドの音楽性の変化を物語る、'76年発表の3rdアルバムにして
ラスト作。・・・というか、本作がリリースされた時点で、既にバンドは解散していたらしい。
アコースティック・ギターを活用した、爽やかに駆け抜けていく①に代表されるように、今回は全体的にポップというか
アコースティカルな作風で、大作主義が影を潜めた楽曲は、いずれもコンパクト且つシンプルにまとめられている。
とは言え、抜群の表現力を誇るマキ姐さんの歌唱と、春日博文(G)が作り出す、キャッチーでフックに富んだ
叙情メロディの数々、そして6人目のメンバーと言うべき、ダディ竹千代こと加治木剛が手掛けた、
70年代の情景がリアルに蘇ってくるかのような、詩情豊かに心象風景を綴った絶品の歌詞とが揃えば、
それだけでアルバムの完成度の高さは約束されたようなもの。
また、後半に用意された、ポジティブな力強さと劇的な曲展開が感動を呼ぶ⑤や、感傷的な雰囲気を纏った前半から、
中盤のメルヘンチックなパートへの転調を経て、再びドラマティックに盛り上がっていく、前2作の路線を
踏襲した大作⑦は、郷愁を誘うメロトロンの音色がプログレッシブ・ロック的な味わいも感じさせる、素晴しき名曲。
偉大なるロック・バンドの、有終の美を飾るに相応しいクオリティを備えた1枚。